2021年3月27日は、1996年に創設された「ドバイ ワールドカップ」第25回目の開催日でした。賞金総額はなんと1200万ドル(13億円)。世界で最も期待されているフラットレースと言えるでしょう。このような名誉あるイベントですが、今年ドバイ・レーシング・クラブはメイダン競馬場への入場を制限せざるを得ない状況でした。
新型コロナウイルスによるパンデミックに備えて、スタジアムへの観客の入場は禁止され、チケットの販売も行われませんでした。招待を受けたのは、競馬関係者、出場者、そして認定されたメディアとスポンサーのみ。因みに、このイベントのスポンサーはエミレーツ航空でした。
この様な状況下にもかかわらず、このイベントは大きく取り上げられ国際的な競馬ニュースとして放送されました。世界中の人々が、今年1位を獲得したミスティックガイドの姿を目撃した日でもあります。
上位4位
ドバイ ワールドカップ2021では、各国から14頭の出走馬が集まり、ダート芝で2000メートル、左回りの往復レースが行われました。残念ながら、そのうちの2頭が不正行為により出走取消されたため、実際の出走馬は12頭のみでした。このレースを見逃した人のために、ここでは上位4位の出走馬名と成績をご紹介いたします。また、競馬初心者の方にも有益な情報も盛り込みました。
ミスティックガイド
ミスティックガイドは4歳馬で、レース場歴はまだ2年目。出場した8つのレースでは、全て上位3位以上に入賞しています。この実績は、両親のゴーストザッパーやミュージックノートの賞歴とよく似ています。3月27日には、チュウワウィザードやマニークールといったレース界のベテランである6歳馬たちを追い抜きました。
ミスティックガイドは、多くの優勝馬を所有しているアメリカのゴドルフィン社の馬です。まだ若くその能力を十分に発揮するには至っていませんが、2位との間に大差をつけての勝利でした。ミスティックガイドの騎手は、2020年にマキシマムセキュリティでサウジカップを制したパナマのルイス・サエズです。
チュウワ ウィザード
チュウワ ウィザードは、2020年の日本中央競馬会(JRA)ダートレース部門でチャンピオンになりました。このレースで日本代表になったのは、チュウワ ウィザードだけです。4位以下の記録がなく、とても輝かしい成績を残していましたが前走のサウジアラビア杯では9位に留まり好成績を残せませんでした。ドバイワールドカップ2021で2位を獲得したことは、彼のキャリアの中で驚くべき回復と言えるでしょう。
チュウワウィザードの馬主は日本の中西忍氏で、騎手は戸崎圭太氏。殿堂入りしたキングカメハメハの最も成功した産駒の一頭で、JRAのリーディングサイアーに2度選ばれました。日本では最高のダートレーサーの一頭として認識されています。
マニークール
マニークールは、ミスティックガイドと同くゴドルフィンを代表する6歳の牡馬。5年前から出走しているにもかかわらず、実際参加したのは8レースのみです。今年はダルシャーン賞、ギャラクシーステークス、モントルトゥー賞で3連覇を達成しましたが、ドバイワールドカップで3位となり連覇が途絶えてしまいました。
マニークールは、メダグリアドーロとインディファイブハンドレッドの産駒です。アメリカで最も偉大な競走馬の一頭ですが、充実したキャリアを積むことができませんでした。しかし、産駒はケンタッキー州の伝説的なレーサー、エーピーインディです。
ハイポセティカル
ハイポセティカルは、ドバイ首長国の皇太子ハムダーン・ビン・ムハンマド・アール・マクトゥームが所有するアイルランドの優勝候補馬。まだ4歳馬ですが、ドバイワールドカップ2021は2歳馬としてのキャリアで9レース目に当たります。名誉あるアル・マクトゥーム・チャレンジ・ロード出走前には、G3とハンディキャップレースにしか参加していませんでした。
2020年は良好なスタートを切れませんでしたが、2021年は上位4位以内という成績を収めています。まだ訓練を通して上達が見込めるので、これまま行けば連勝記録が破られることはないでしょう。
ハイポセティカルの父はロペデヴェガで、母はプテトルですが、どちらも比較的出走数は少ない競走馬でした。ハイポセティカルはドバイ以外ではあまり有名ではないですが、国際的なイベントに参加するようになればそれも変わってくるでしょう。
出場馬の出走取消(スクラッチ)
注目のドバイワールドカップ2021が始まる直前に、不幸な出来事がありました。2頭の候補馬が不正行為で競技から外されることになったのです。グレイトスコットは他の馬と喧嘩し、これによって今回優勝したミスティックガイドとルイス・サエズを含む他の出走馬・騎手にも影響が出てしまったと報告されています。
また、ミリタリーローは、スターティングステーションで選手が配置されている間に脱走し、騎手のフレスー・アントニオを置いて、捕獲されるまで数分間の間スタジアムを走り回っていました。
結果として、ミリタリーローとグレートスコットの2頭は1200万ドルの賞金を賭けたこのレースから出走取消となり、このレースの出場者は当初約束されていた14頭ではなく、12頭となりました。
閉会式
イベント全体の閉会式は、例年通り素晴らしいものでした。メイダン競馬場の空は見事な光のショーで飾られ、馬、王冠をかぶった馬の頭、ロゴなど、誰もが知っている図形がスタジアムの上空に出現しました。
また閉会式では、ドバイ副首長、UAE財務大臣などを歴任した故ハムダン・ビン・ラシッド・アール・マクトゥーム氏が3月24日に75歳で逝去されたことを受け、彼に対する追悼の気持ちが込められていました。
彼は競馬と繁殖の愛好家で、サラブレッドのフラットフットレースだけでなく、アラビアン品種にも投資していたことで有名です。彼の名誉は、ドバイ ワールドカップ2021の当日に行われる伝統的なドバイ カハイラ クラシックでAl Zahir(アッ=ザーヒル)によって表現されました。
その他のレースのまとめ
この日の目玉レースである「ドバイ ワールドカップ2021」は、午後8時頃に最終レースとして予定されています。2頭の馬の不作法により目玉である賞金1200万ドルのレースは午後9時近くまでずれ込みました。
メインレースの前には9つのレースが行われ、そのいずれもがドバイでトップクラスのレースです。中には、地元の参加者だけが参加できるものや、サラブレッドではなくアラビア品種を出走させるものもありました。
カハイラ クラシック
栄えあるこのイベントは「ドバイ カハイラ クラシック」から始まります。今回で22回目となるカハイラ クラシックは、ムバダラ・インベストメント・カンパニーがスポンサーとなり、1億970万円の賞金がかけられました。純血種のアラビアンホースによるG2レースです。5歳以上のアラビアン種を対象に、左回りのダートトラックで2000メートルのレースが繰り広げられます。ここでは、上位4位の入賞馬をご紹介します。
- Af Alwajel(アラブ首長国連邦)
- Al Rhoba’a Al Khali(オマーン)
- Al Zahir(フランス)
- Brraq(フランス)
ゴドルフィンマイル
第27回ゴドルフィンマイルは、3歳と4歳のサラブレッドを対象としたG2フラットフットレースです。レースは全長1600メートルのダートトラックで行われます。賞金総額は1億970万円で、スポンサーはMohammed Bin Rashid Al Maktoum City District One社です。上位4位の入賞馬は以下の通りです。
- Ambassadorial(アメリカ)
- Avant Garde(アメリカ)
- Blown By Wind(イギリス)
- Chiefdom(アメリカ)
ドバイ ゴールドカップ
25回目となるドバイ ゴールドカップは、UAEの新車・中古車総合ディーラーであるAl Tayer Motors社がスポンサーを務める、賞金総額8200万円のG3フラットレースです。このレースは、3歳以上のサラブレッドが3200メートル左回りの芝コースを走り抜ける耐久力のある戦いを繰り広げます。上位4位の入賞馬は以下の通り。
- Away He Goes(アイルランド)
- For the Top(アルゼンチン)
- Global Heat(アイルランド)
- Mekong(イギリス)
アルクオーツ スプリント
今回で15回目となるアルクオーツ スプリント。このレースは、直線の芝トラックで行われるG1フラットフットレースです。レースは1200メートルと短めなため、スプリントが勝利の鍵を握っています。3歳以上のサラブレッドを対象としていて、賞金総額は1億970万円でUAEの大手民間デベロッパーであるAzizi Developments社がスポンサーとなっています。上位4位の入賞馬は以下の通り。
- Extravagant Kid(アメリカ)
- Final Song(アイルランド)
- Acklam Express(アイルランド)
- Equilateral(イギリス)
UAEダービー
UAEダービーは、3歳のサラブレッドが対象のG2レースです。2000年に開催されて以来、今回で22回目の開催となります。左回りのダートトラックで、1900メートルのフラットフットレースです。このイベントは、エミレーツNBD銀行PJSCがスポンサーとなっており、賞金は2億7420万円。上位4位の入賞馬は以下の通りです。
- Rebel’s Romance(アイルランド)
- Panadol(アメリカ)
- New Treasure(アイルランド)
- Takeru Pegasus(日本)
ドバイ ゴールデン シャヒーン
今回で第25回目となるドバイ ゴールデン シャヒーンは、3歳以上のサラブレッドを対象としたG1フラットフットレースです。このレースは、1200メートル左回りの芝コースで行われます。ガルフニュース社がスポンサーとなっており、賞金は2億1930万円。上位4位の入賞馬は以下の通りです。
- Zenden(アメリカ)
- Red Le Zele(日本)
- Canvassed(アイルランド)
- Wildman Jack(アメリカ)
ドバイターフ
今回で25回目を迎えるドバイターフ、通称ドバイ デューティーフリー。芝コースで行われるG1のフラットフットレースで、レースは全長1800メートルの左回りで、4歳以上のサラブレッドが対象です。賞金額はドバイ シーマクラシックと同じ5億4700万円。このイベントのスポンサーは、現地の多国籍物流企業であるDubai Port Worldです。上位4位の入賞馬は以下の通りです。
- Lord North(アイルランド)
- Vin de Garde(日本)
- Felix (イギリス)
- Epic Hero(フランス)
ドバイ シーマクラシック
ドバイ シーマクラシックは、4歳以上のサラブレッドを対象としたG1フラットフットレース。距離は2400メートルの左回りです。1998年に初めて開催されて以来、今回で第23回目の開催となります。賞金総額は5億4700万円で、世界で最も高額な競馬イベントのひとつです。スイスの高級時計メーカーであるロンジンが主催しています。上位4位の入賞馬は以下の通りです。
- Mishriff(アイルランド)
- Chrono Genesis(日本)
- Loves Only You(日本)
- Walton Street(イギリス)
ドバイ シーマクラシックは、メインイベントであるドバイ ワールドカップの直前の最後のレースです。上記に記載した全てのレースは、いずれも優秀な競走馬のみが招待されるトップクラスのイベントとなっています。
スケジュールのまとめ
3月27日(土)は、2021年の中でも特にイベントが多い日であり、世界の競馬界で最も名声のあるイベントのひとつでした。すべてのレースで上位4位を獲得した勝者の皆さん、改めておめでとうございます。
午後1時57分、このイベントの会場や競走馬を紹介するストリーミングが始まるとともに、レースは正式に開始されました。この日の最初のレースは、午後3時に始まったカハイラ クラシック。この日は明るい日差しが降り注ぐ夕方でした。
ドバイ ゴールデン シャヒーンが開催中の午後6時20分頃には、照明が当てられるほど外が暗くなりかけていて、イベントが終了する頃にはすっかり暗くなっていたため、閉会式で行われた光のショーがより一層際立っていました。
以上、ドバイワールドカップ2021の競馬ニュースハイライトをお届けしました!グレイトスコットとミリタリーローの馬主には悔しいレースとなってしまいましたが、今年この一連のイベントの開催に最善を尽くした参加者達には大きな拍手を贈りたいと思います。