秋のG1戦線を占う・中距離編~勝つのは牝馬?それとも牡馬?~

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東京オリンピック開催に際してやや変則的な開催となっている2020年の日本競馬界ではありますが、夏開催のメイン的レースでもあり、秋競馬の到来を告げる札幌記念(G2、2000m、芝)が8月23日(日)に開催されました。

グレード的にはG2ながらも、毎年豪華メンバーが揃う札幌記念。注目を集めたのは単勝オッズ1.9倍の1番人気に推されたG1レース3勝の実績馬、ラッキーライラックでしたが、惜しくも3着。そんなラッキーライラックを相手に完勝ともいえるレースぶりを見せたのは、今年の宝塚記念(G1、2200m、芝)を制したクロノジェネシス(牝4)の姉であり、自身もG1ウィナーである2番人気のノームコア(牝5)でした。

そんな札幌記念ですが「今年の競馬界」を非常によく表している傾向が見て取れました。レース結果こそ上位5頭が「牡馬2頭・牝馬3頭」とほぼ互角でしたが、人気上位3頭を挙げると、先ほどご紹介したラッキーライラックが1番人気。勝利したノームコアが2番人気。そして4着入線となった3番人気のポンデザールなど、全て『牝馬』が支持されていました。

そもそも今年の春に行われた古馬主要G1レース(1600m以上の芝レース限定)の結果を今一度見てみると、牡馬が勝利したのは天皇賞春(G1、3200㍍・芝)におけるフィエールマンのみ。さらに言ってしまえば、昨年の秋古馬三冠(天皇賞秋・ジャパンカップ・有馬記念)これらすべてで牝馬が勝利しているように、現在の日本競馬界は完全な牝馬上位の勢力図となっています。

競馬界を牛耳る3頭の「女帝」

牡牝関係なくまず真っ先に名前を挙げなくてはならないのは、G1レース7勝の現役最強馬アーモンドアイ(牝5)の存在でしょう。当初今年の目標に掲げていたドバイ遠征が、コロナ流行の影響で中止。そういったアクシデントがありながらも出走したヴィクトリアマイル(G1、1600m、芝)では、先ほどの札幌記念を制したノームコアらを全くもって相手としない走りで最早「制圧」ともいえる勝利を挙げました。

続く安田記念こそ、緩めの馬場に普段のキレを見せきれず2着と敗れましたが、秋のG1戦線においても最注目しなくてはならない存在であることは間違いないでしょう。既に初戦を11月1日(日)の天皇賞秋に定めており、昨年に引き続きの連覇に期待がかかります。

そんなアーモンドアイに雪辱を果たしたいのが同い年のラッキーライラック。

そもそも、アーモンドアイそしてラッキーライラックが対戦した2018年の牝馬クラシックにおける「当初の主役」は、このラッキーライラックでした2歳女王決定戦である阪神ジュベナイルフィリーズ(G1、1600m、芝)をはじめ4連勝。そして単勝オッズ1.8倍の高い支持を得て迎えた桜花賞(G1、1600m、芝)。しかしここでアーモンドアイに衝撃的敗戦を喫します。

その後、ラッキーライラックは7戦にわたって勝利を挙げることが出来ず、アーモンドアイとの差は開くばかり一方。そんな中転機となったのが2019年のエリザベス女王杯(G1、2200m、芝)。世界的名手であるスミヨン騎手の手綱さばきによって見事完全復活を告げる勝利。今年は大阪杯(G1、2000m、芝)も制し、G1レース3勝目を飾りました。デビュー当時480キロだった馬体重は今や520キロ。この成長分が決して無駄ではないことは実績が物語っています。後はもう、リベンジを果たすだけでしょう。

そんな先輩2頭に比肩しうる存在なのが、クロノジェネシス。圧巻だったのは「大混戦」と評されていた今年の宝塚記念でのパフォーマンス。2番人気と中心視されてはいましたが、結果は2着に1.0秒差をつけての勝利。馬場を味方につけた印象もありましたが、直線がもっと長ければどこまで突き放してしまいそうなほどの走りに、衝撃を覚えたファンそして「凱旋門賞」を意識したファンも、多かったのではないでしょうか。

ラッキーライラックとは違い、アーモンドアイとの対決が未だにない点も非常に気になるところ。新旧女王対決が見られるか否かが、今年の秋の日本競馬の大きな見どころのひとつとなるでしょう。

「未完の大器」を筆頭に楽しみな牡馬たち

牡馬も決して負けている訳ではありません。注目馬筆頭はG1ウィナーにして現在は種牡馬として活躍しているリオンディーズやエピファネイアらを輩出したシーザリオ一族のサートゥルナーリア(牡4)。

牡馬クラシック一冠目となる皐月賞(G1、2000m、芝)をはじめ、G1レースをすでに2勝。2019年の有馬記念においても2着に入線するなど、現在の古牡馬では実績最上位。ですが正直なところ、サートゥルナーリアの成績を鑑みた際に、現状で納得しているファンや関係者はあまり多くはないのではないでしょうか。これだけの成績を残しても「未完」と感じざるを得ません。

G1レース2勝、しかも、クラシックも勝利している馬に対して「未完の大器」と評すのはあまりにも失礼な話かもしれません。しかし「強い競馬」を見せたときの走りは、アーモンドアイらも霞むほど魅力的。そんな走りをもし安定して、そしてG1レースの舞台で見せつけてくれる日がくれば、今の日本競馬界がもっと面白くなることでしょう。

また、気になるのは「鞍上問題」。主戦であるルメール騎手はアーモンドアイの主戦騎手でもある為、この2頭がぶつかり合う際は「どちらに、誰が騎乗するのか」も、注目のポイントとなります。

フィエールマン(牡5)も注目の1頭。体質面にやや難は残しますが、デビューわずか4戦で菊花賞(G1、3000m、芝)を制した素質の高さと、天皇賞春連覇の偉業を成し遂げた実力は折り紙付き。秋の初戦は9月27日(日)のオールカマー(G2、2200m、芝)と陣営からも発表。これまでのローテーションから考えればオールカマー後はどこか1戦に絞ってきそうな雰囲気があるだけに、どのレースに出走するのか、そしてどんな走りを見せてくれるのか。もしかすると、このフィエールマンの存在が、今年の秋古馬戦線を盛り上げ、また、馬券検討を難しくしてくれそうです。

2018年の有馬記念(G1、2500m、芝)を制したブラストワンピース(牡5)や、2017年の菊花賞での勝利をはじめ、G1レースで4回の2着入線を果たし、宝塚記念では復活の兆しを見せたキセキ(牡6)なども、注目古牡馬の一角を担います。

凱旋門賞への遠征や、12月の香港遠征などが難しいであろう2020年の日本競馬。だからこそ実力、実績馬たちが全て秋のG1レースに全力を注ぐこととなります。見ごたえのあるレースに是非とも期待しましょう。

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